家でできる最高にキツい運動は、自転車のローラー台だと思ってます。
ただし、
キツい運動=高い負荷をかける=ローラー台への加わる力も大きい
結果 ローラー台はうるさくなる
なので、この騒音問題を解決しないと家で最高にキツくて楽しいローラー台での運動ができません。
今回は、私が数年間使っている防音方法を紹介します。これを使えば、周囲の人に迷惑をかけずにローラー台の練習に打ち込むことができます。
方法は以下の通りです
ローラー台の下にグロータックのブルカット2(防震構造)を置く
この効果がどのぐらいあるのか、実際の測定結果を示します
これを見ればブルカット2のすごさが分かります
ブルカット2の静音効果
ローラー台の下に4か所ブルカット2を置いて、この負荷で測定を実施しました。
出力200W ケイデンス90 フロント36 リア17 ローラー台 ミノウラV270
- ブルカット2あり 60.3dB(左の写真)
- ブルカット2なし 66.1dB(右の写真)
※写真のピンクのラインは一時的なピーク値を示していますので無視ししてください。ここで、言っているのは平均した値のことです。
なんとブルカットにはこれだけの効果があります。
ちなみにそれぞれの音圧レベルを一般的な指標で表すと
60dB 普通の会話
70dB 騒々しい事務所
正直、今までブルカット2なしでローラー台をやったことはありません。数値上の違いもありますが、実際にやってみると想像以上に音が小さくなったと実感できました。
実際にこの値の差を感じたい方は以下の方法でトライしてください
ステップ1 騒音計アプリをインストール
ステップ2 もう一台スマホを用意
ステップ3 用意したスマホで音を鳴らして、もう一台は騒音測定
これで音の大きさによって、どれだけ違うかが感じられます
※実際には発生している音の周波数帯が異なるので、厳密に同じというわけではありません。ですが、購入前にこういったことで感覚を掴むのは大切だと思ってます。
音の測定にはおなじみの「DecibelX」を使ってます
騒音アプリを比較した記事はこちらにあります。詳しく知りたい方はこちらにどうぞ
ちなみに、今回の測定ではC特性で測定してます。初期設定ではA特性で測定しています。
A特性って何?って人はこちらをご覧ください。
人間の耳には聞こえやすい周波数帯があるので、それに合わせたものがA特性です。ただ、ローラー台の騒音にはその特性で補正がかけられる低い周波数帯で音が発生しているのでC特性にしました。
音が発生するメカニズムを考察
もう一つの騒音計アプリ「SpectrumView」で変化した周波数帯を確認しました
この写真の見方は、左半分がブルカット2あり、右半分がブルカット2なしです。
これを見るとブルカット2は200Hz以下のところで音を抑制する効果がありそうです。特に100Hz周辺で黄色い帯がなくなっているので、ここに効果がありそうです。
では、100Hz付近で音が発生する理由は何ですか?
それは、ローラー台についているフライホイールの回転だと推定してます。
フライホイールとは、この写真の中央に見える鉄の円盤のことです。では、なぜこれが100Hzの原因かを説明します。
1.ロードバイクのタイヤの回転数を考える
今回は、ケイデンス90でペダルを回しているので、1秒あたりに90÷60=1.5回クランクを回していることになります。
また、フロント36 リア17 のギア設定なので、クランクを1回回すと、タイヤとしては 36÷17=2.12回転することになります。
すなわち、タイヤは1秒間に 1.5×2.12=3.18回 回転しています
2.フライホイールの回転数を考える
次にフライホイールの回転数を考えます。
タイヤとローラー台の接点が滑ることなく回っていると仮定すると、タイヤが回って進んだ距離と同じ分だけ、ローラー台側も回転することになります。ローラー側の方が、軸の太さが小さいので、同じ距離を稼ごうとすると、ローラー台はタイヤよりも多く回る必要があります。
タイヤの全周長さ × タイヤ回転数 = ローラー台の接触軸の全周長さ × フライホイール回転数
となります。
ここで、タイヤは68cm ローラー軸4cmとすると、
フライホイールの回転数は、こうなります。
68 × 3.18 ÷ 4 = 54
よって、フライホイールは1秒あたりに54回転 すなわち54Hzと表せます
3.なぜ100Hzなのか?
フライホイールの回転数は54Hzですが、音は100Hz付近で大きい。この違いは何か?
それは、左右の足で踏んでいるからです。
というのも、クランクを一回転する間に、右足と左足で一回ずつ踏んでます。すなわち、1回転中に2回力が加わるということです。
フライホイール自身は、常に同じ速度で回っているわけではなく、タイヤの回転の変動に合わせて変化しています。そして、このタイヤの回転変動を生み出しているのが、左右の足でのペダリングです。
クランク1回転の間に力の変動が2回発生する。
これによって、フライホイールの回転も2回変動することになる。
なので、先ほどのフライホイールの回転数と、この2回の変動をかけると
54 × 2 = 108 となり、 測定した周波数と一致してきます。
これが、100Hz付近で音が大きくなっている原因です。
やっと、フライホイールの回転が音を生み出す原因なのだろうと説明できました。
では、次になぜグロータックのブルカット2を使うと静かになるかを考えました。
ブルカット2の効果の理由は?
まず、こちらのグロータック社のブルカット2の製品説明を見てみてください。
読むの面倒という方に向けて簡単に説明します。
- ブルカットは騒音を減らすものではない
- ブルカットは振動から発生する音を減らすもの
先ほど説明したように、フライホイールの振動によって、音が発生しています。
それは、その振動によって、家の床や壁が振動し、それらがスピーカーとなって音になっているのです。
なので、ブルカット2を使うことで音が軽減できるものは以下のような条件のものだと思います。
- 固定ローラーのようにフライホイール(回転体)がついているもの
- この回転体のアンバランスによって、上下方向に振動を発生させる
逆に、3本ローラーのように、ペダルを踏みこむ力によって回転変動を起こすものがないものは、ブルカット2の効果自体が小さくなると思います。もちろん、使った方が効果はあるはずですが、固定ローラーほど顕著ではないと推定します。
私は、このグロータックの説明は非常に正直でユーザーのことを考えたものだと思っています。というのも、グロータックとしても「音」として、何dB下がったというのは測定可能なはずで、それを宣伝に使うこともできたのにしていないからです。
なぜかというと、この「音」というのを正確に測ろうと思うと、非常に大変で、どういった設備、場所で測定したかによって容易に変わってしまうからです。さらには、実験室で得られた効果が、一般家庭(鉄筋、木造、1階、2階)で全く異なる構造で再現できるわけではないからです。
なので、比較的再現性の高い「振動」という指標で効果をうたっているのだと思います。なので、ローラー自身が回転するときの騒音を減らすのではなく、ローラー自体が振動してそれを周囲の構造対に伝えるのを防ぐとしているのです。
ちなみに、グロータックの振動測定結果でも100Hz付近でピークを示しているので、私の予想した振動発生メカニズムも当たってそうですね。
まとめ
グロータックのブルカット2の良さ、グロータック社の正直さ伝わってくれるといいなと思って書きました。
私自身が知る範囲の知識で書いているので、多少の論理の飛躍、間違いがあるかもしれません。ただ、ブルカット2がなぜ「音」を小さくしてくれるかの、だいたいの理屈は分かっていただけたかと思います。こういった物理的なことを考えるのは仕事柄好きなので、これからも気になったことを書いていこうと思ってます。
ブルカット2の値段が気になった方はこちらから確認してみてください。
では また