ヒルクライマーが好む道は おおよそ人のこない山道だ
自分の呼吸以外何も聞こえない道をただひたすら走る
走るというよりも ペダルを通じて路面を踏みしめるような感覚だ
山の中が気持ちいいと感じる理由は人それぞれだろうが
自分の理由はこんなところだ
人工的な音と無縁の空間
ひんやりとした空気
鳥の鳴き声
人の気配のない孤独感
こんな山の中の峠道でもし倒れたらどうなるのか
携帯の電波はギリギリ通じるが 落車でもして気を失ったら?
自分の次に誰がいつこの道を通るのだろうか
現実世界ではなかなか感じない死に近づく場面
そんな側面を持つヒルクライムが人々を魅了するのではないか
登り切った達成感を得たい
登り切った先の景色が素晴らしい
そんなものは表面的な理由でしかなく
生きながらにして死を感じる瞬間を求めて坂を上るのだ
さて 雨のあとは道路に浮いた砂で滑りやすいから
下りはいつも以上に気を付けて下ろうか